2023年3月

 東京聖三一教会の管理牧師を二年間務めておりました時、大斎節中の大事なミッションがあると告げられました。それは教会の敷地内にある棕櫚の木の葉を箱詰めにして北海道教区に送るというミッションでした。寒冷地の北海道では棕櫚が育たないために、復活前主日の棕櫚の日曜日に用いる棕櫚が手に入らないから毎年お送りしている、というのです。なるほど子どもの頃に育った東北教区でも、棕櫚ではなくソテツで十字架を作って礼拝に用いていた記憶があります。牧師であった父は鉢植えの棕櫚を大事に家の中で育てていましたが、ほんの小さな木でしたので到底礼拝に用いるだけの葉の数にもなりません。けれども東京の暖かさの中で、棕櫚はむしろ強健でどんな条件の土地でも次々と芽を出し、まっすぐに何メートルもの高さとなり、大きな葉を生い茂らせます。
 その高木にはしごを使ってよじ登り、葉を落として水洗いし、新鮮なままで到着するようにと箱に詰めて送ります。北海道ほどではありませんが、大斎節はまだまだ寒い時期の外での作業です。なんと手間をかけてもらって大事に遠方に送られていく棕櫚の葉だろうと思いました。そしてその棕櫚を喜んでくださる方々のために、毎年一生懸命棕櫚と格闘してくださる信徒の方々を誇りに思ったものでした。
 今年からは受け取る側です。心して、有り難く頂戴し、北海道の各地の教会で用いさせていただきます。棕櫚の葉を通して与えられている祈りの交わりに感謝します。
 灰の十字架のしるしをいただく大斎始日から始まり、一層復活日に備えて心を傾ける聖週にわたしたちは突入しようとしています。闇と冷たさに包まれた長い長い冬を終えようとしているこの季節、キリストのご受難とご復活の神秘を、聖週ことに聖なる三日間の礼拝でひとつひとつなぞっていきます。そしていよいよ春の暖かさに包まれるかのような喜びのご復活日を迎えるのです。

主教 マリア・グレイス 笹森田鶴

2023年2月

 
 今年、大事な礼拝や行事がいくつも行われます。
 2月には第18回全聖公会中央協議会(ACC)がガーナで開催され、管区代表として吉谷かおるさん(札幌キリスト)が参加されます。昨年のランベス会議とも関連した世界規模の課題が協議されます。
 東北教区では4月22日、フランシス長谷川清澄主教被選者の主教按手・教区主教就任式が執り行われます。聖霊のお導きを心より祈り求めます。わたしたちも新主教を迎える東北教区との宣教協働・教区再編へ一歩進みます。
五月には恒例の北海道教区宣教開始記念礼拝(149年)が行われます。この永き時を神様がお導きくださった幸いをともに感謝し、祝いたいと願っています。日程は決まり次第お知らせします。
 7月25日〜28日には聖公会保育者連盟全国保育者研修会が函館大沼で開催され、200名近い方々を全国からお迎えします。各園の園長先生やチャプレンの皆さんが準備を担ってくださっています。感謝です。ご加祷ください。
8月31日〜9月3日、全国青年大会が七年ぶりに東京神田で開催されます。北海道からもぜひ青年たちを送りたいと願っています。わたしも担当主教として参加します。
 11月10日〜13日は日本聖公会宣教協議会が清里清泉寮で行われます。北海道教区から八名の代表者が参加します。宣教の五指標、これまでの各教区での宣教の実り、これからの宣教課題を分かち合い、語り合います。またその内容を教区へ持ち帰り、各教区の宣教の活性化へとつなげていきます。
 日々の信仰生活がわたしたちのベースであることは当然ですが、これらひとつひとつの営みも丁寧に過ごしつつ、北海道教区は来年宣教150年をいよいよ迎えることとなります。楽しみでもあり、身の引き締まる思いでもあります。この重要な時を、北の大地における神さまの平和と愛の実現のために、皆さまとご一緒に主の御用に加わる恵みに心が震える思いです。

主教 マリア・グレイス 笹森田鶴

2023年1月

 東北生まれの東北育ちでも、北海道の冬はさすがに想像を越えています。北海道に住んでいらっしゃる方にとっては当然の生活の知恵が、驚くほどわたしにも夫にもないのです。身支度もさることながら、雪の時期には車にスコップや雪用長靴、毛布などを搭載するとは思いもしませんでした。そのような具合ですので、皆さまに心配をしていただきながら、寒さや雪への対策について日々学び、経験しています。
 そして一二月。網走・北見へ向かう列車の窓からは、札幌ともまた違う豪雪
地帯の様子を眺め、湖も凍る寒さを経験し、帯広ではスケートリンクのような道路や歩道がたった一晩で一面真っ白に変化する様子にただただ驚き、岩見沢では園バスが出られなかったと伺い、それぞれの教会や園での除雪のご苦労に
も少しだけ触れました。クリスマス寒波では、ことに紋別が豪雪のために幼稚園が休園となり、その後全市が停電し、越山健蔵先生が二日間も避難所生活を余儀なくされました。停電は災害ですので寒さも心配しましたし、その後の電気や道路の復旧があって安堵いたしましたが、何より驚いたのは、それらの大変さは大変さで、次の日は普通に皆さん生活しているということでした。北海道に住む皆さんの、冬の自然の厳しさへの覚悟やたくましさ、また最後は神さまにお任せしている姿を垣間見させていただいているようでした。
 この北の大地に点在している教会・伝道所で、聖職や信徒の皆さんが礼拝前の除雪に汗を流し、訪れる方の足を守り、コロナとも闘いながら教会の営みを続けてくださっていることは、皆さんにとっては当然のことかも知れませんが、それ自体すばらしい宣教活動であり、大きなことです。感謝でしかありません。
 この原稿を皆さんが読んでいらっしゃる頃にはもっと寒く雪も多くなっているかも知れません。教会の行き帰り、また普段の生活の中でも、どうぞくれぐれもお気をつけてお過ごしください。皆さまのために祈っています。わたしも美しい冬の北海道の季節を楽しみながら過ごします。

主教 マリア・グレイス 笹森田鶴